皆さま、こんにちは!蒲田で6年間、漢方相談を経て、現在大森駅直結・漢方薬専門の仁和堂薬苑の韓です。二月を皮切りとして四月ごろまで強烈なスギ花粉が飛び始める季節になりました。花粉症の方たちにとっては、鼻水や鼻づまり、目の充血やかゆみとツライ毎日がはじまりますね。毎年のことだからとあきらめている方も多いのでは?今日は、花粉症を克服するための薬との付き合い方をお伝えしたいと思います。
1.そもそも花粉症とは
もう何年も花粉症に悩んでいる方は、毎年のことだからとその場しのぎで花粉症に対応する市販薬や花粉対策グッズを買っていませんか。本気で花粉症を克服するためにも、まずは花粉症について一度理解を深めてみましょう。
一般的な花粉症の発生原因
花粉症が発生する原因は、簡単に言うと体の免疫機能が誤作動を起こし、過剰に働いてしまうことに起因します。
私たちの身体は、異物となる花粉(=有害物質)が体内に入ってきたときに、身体の中では免疫機能の役割を持つリンパ球(Th2)が、この事態を肥満細胞に伝えます。リンパ球(Th2)によって花粉が体内に入ってきたことを知らされた肥満細胞は花粉を排除するために過剰にヒスタミンという物質の分泌をはじめます。このヒスタミンが過剰に分泌されると、いわゆる鼻水や鼻づまり、涙目や目のかゆみといった不快な症状となって現れるというわけです。ちなみに、医学的には花粉症はアレルギー性鼻炎とも言われているのですよ。
漢方が考える花粉症の原因
漢方では、先ほど紹介した一般的な原因に加え、①衛気の低下、②風邪による侵入、③肺機能の低下、④水分代謝の乱れ(=水毒)と、さまざまな要因が重なって発生すると考えられています。
①衛気の低下
衛気(えいき)とは、私たちの身体を構成している気・血・津液のひとつ「気(き)」に該当するもので、身体表面を巡り外的刺激から体内を守ってくれる役割をもっています。つまりこの衛気が低下すれば花粉から体内を守ってくれる存在がなくなるので花粉に侵されやすくなるという訳ですね。
②風邪(ふうじゃ)による侵入
漢方の世界では、外的刺激には六つの邪気(風邪、火邪、暑邪、湿邪、燥邪、寒邪)が存在すると考えています。そのうち、花粉症と関係が深いのが風邪(ふうじゃ)です。先ほど紹介した衛気が低下することで、この風邪に侵される可能性が高まります。
③肺機能の低下
風邪の侵入により、乾燥を嫌う肺の機能が低下します。肺と言えば、漢方の世界では鼻などの呼吸器官を通して呼吸をしますね。だから、花粉症は鼻水や鼻づまり、くしゃみと呼吸器官のひとつである鼻に症状となって表れるのがイメージできるのではないでしょうか。
④水分代謝の乱れ(=水毒)
実は、肺には呼吸のほかにもう一つの働きが。それは呼吸と同時に体内の水分調節も行っています。つまり肺機能が低下すれば、本来排出されるべき余計な水分がうまく排出されずに体内に溜まり、鼻水や涙目に繋がるのです。
花粉症といっても漢方薬の視点に立てば、一般的なアレルギー反応だけでなく、さまざまな要因があるのが分かっていただけましたでしょうか。そこで花粉症を克服するために漢方薬の活用がおすすめなのです。
2. 花粉症に漢方薬がおすすめの理由
なぜ花粉症に漢方薬がおすすめなのか、お話しますね。現在花粉症に使われているのは、一番初めにご説明したヒスタミンやアレルギーの症状自体を抑える抗ヒスタミン剤や抗アレルギー薬です。これらの薬は、鼻水や鼻づまりをはじめとした花粉による不快な症状を抑えることはできますが、一定時間が過ぎ、薬の効果が切れれば、花粉が飛んでいる限り、また同じように不快な症状が発生します。また服用中の口喝や眠気といった副作用があることから、この時期の受験生や働く会社員の日中活動に支障をきたすため、不快な症状があっても服用せずに我慢している方もいるほどです。
一方で、漢方薬はこのような副作用がないので、日中活動にも影響させずに花粉症対策をすることができます。車の運転を控える方でも服用することができるほどです。その上で漢方薬というのは、ただ不快な症状を緩和させるだけではありません。花粉症につながる原因を身体の根本から探り、その原因に働きかけてくれる生薬が配合された漢方薬を選びだし、飲んでいきます。つまり、症状を一時的に緩和しながら、ただ花粉の季節が終わるのを待つだけでなく、漢方薬を飲み続けることによって、花粉に負けない体作りをしていくことができるのです。
3. 花粉症で使われる漢方薬
花粉症の不快な症状を招いている要因が一つでないように、漢方薬も花粉症と言えばこれだけ飲めばいいというほど単純なものではありません。そのため花粉症を克服するための漢方薬は、一人一人の体質と、その人の花粉症の段階や症状を総合的にみて判断していく必要があります。ここでは、花粉症に対する漢方相談の現場で登場する漢方薬をご紹介したいと思います。
鼻水・鼻づまりがツライ
- 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
- 葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
- 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
- 辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
- 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
- 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょとう)
さらさらとした鼻水からねっとりとした鼻水、そして鼻づまりまで、今悩んでいる状態に合わせておすすめの漢方薬の例となります。
そのほか各種症状別
- 黄耆建中湯エキス(おうぎけんちゅうとう)
- 玉屏風散(ぎょくへいふうさん)
- 柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)
- 清肝明目湯(せいかんめいもくとう)
肺にアプローチする漢方薬から、目の痒みなどに働く漢方薬などの例となります。
花粉症に負けない体作り
- 健胃顆粒(けんいかりゅう)
- 補中益気湯(ほちゅうえきとう)
- 衛益顆粒(えいえきかりゅう)
消化器系に属する脾胃が気虚に傾くと、花粉から身体を守る衛気も作られません。そのため食欲不振、消化不良や倦怠感を感じるときにおすすめの漢方薬から、身体全体の気を補うための漢方薬の例になります。
4.漢方薬で花粉症対策をするときの注意点
一般的な使われている抗ヒスタミン剤や抗アレルギー薬と比べると、口喝や眠気といった副作用はありませんが、漢方薬も薬の一種なので、花粉症を克服するための漢方薬選びをするときには、漢方相談を行っている専門店で、きちんと自分の花粉症の状態を聞いてもらい、その上で選んでもらった漢方薬を飲むことをおすすめします。よく漢方薬はなかなか効果を実感できないと耳にしますが、それは自分の症状に適した漢方薬を選べていないからです。実際に漢方薬にも副作用はあります。でもそれは、言い換えれば正しく飲めばきちんと効果を実感できるというわけですよね。
5.セルフケアでできる!花粉養生法
漢方薬を使って体質改善をし、花粉症に負けない身体作りをするのもひとつの方法ですが、私たちの身体は毎日の積み重ねによって出来ているので、毎日の中で自分で自分の体をケアしていくことも大事ですよね。今日はそのために意識してほしい花粉養生法を合わせてお伝えしますね。
基本中の基本!きちんとお休みを摂りましょう
現代人は、男女問わず仕事をしていることも多く、遅くまで残業している方もいれば、退社後に終電まで外でご飯を食べたりしている人も多いでしょう。自宅に帰っても慌ただしく寝るための準備をし、寝る直前までは携帯でネットを見るなどなど。これらの流れにおいて「気」を休める時間はありますか?漢方の世界では、例えば仕事という作業をしていなくても、誰かと話したり、頭の中で次の日の会議のことを考えていたりするのにも、「気」は使われていると考えます。そのため、「私はお休みをとっているわ」と思っている方でも、本当の意味でお休みをとれていない方も多いのです。「気」の酷使は衛気の働き低下につながるので、まずは体をきちんと休ませましょう。
肺と脾に負担をできるだけ減らすこと
先ほど、衛気の話をしましたが、この衛気をつくるのが、肺と脾による働きです。呼吸が浅くなってしまえば、どんなにバランスの良い食事をしても血液によって体全体に運ばれません。かといって、肺が元気でも、そもそも食べ物から栄養を吸収する脾が元気でなくては、栄養を上手に吸収できません。なかには食欲が起きない方もいるでしょう。つまり、肺と脾が元気であることは、花粉症に負けない体作りにはとても大事なのです。それにも関わらず、私たちは毎日の生活の中で必ず呼吸と食事をしますよね。そのため、肺と脾は常に働いているわけです。そこに度重なる暴飲暴食や冷暖房による空気の乾燥が加われば、肺と脾には負担がかかりますよね。そのため、夜遅い食事や外食などを控え、消化に良い食事を摂るようにし、冷暖房に頼りすぎず、毎日20分程度の有酸素運動をするなどの心掛けも大事なのです。
体を冷やさないこと
花粉症の症状であるサラサラとした鼻水やくしゃみ、涙目などは、体内の冷えとも深く関係しています。体が冷えてしまえば、余分な水分が溜まりやすくなってしまうのです。おしゃれな方が多い日本人は、春になった途端に薄着になる方が多いように思います。おしゃれを楽しむのも大事ですが、日本にも「冷えは万病の元」という言葉があるように、花粉症だけでなく、さまざまな不調を招きます。暦上の季節だけでなく、自分の身体が感じる暑さや寒さにあわせた服装選びをするなどして、身体を冷やさないように心がけましょう。
6.花粉症と薬の付き合いかた–まとめ–
いかがでしたでしょうか?花粉症と聞くと、「とにかく鼻水が辛いから薬を」、「花粉症の薬を飲んでも聞いてない気がする」と花粉の季節が終わるまでひたすら我慢するなど諦めてしまいがち……。でも同じ花粉が飛ぶ季節に花粉症に悩む方もいれば、全く平気だという人がいますよね。
つまり、花粉症にもきちんと発生する原因があるのです。また漢方薬の面から言えば、花粉症には段階もあります。自分の花粉症がどの段階かも分からずにむやみに市販薬を飲んでいてはいつまで経っても、花粉症を克服するのが難しいのではないでしょうか。あなたもこの機会に漢方薬を活用して花粉症の悩みを克服してみませんか。
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